担い手確保へ市民の力生かせ

認知症や知的障がいなどで物事を判断する能力が不十分な人に代わり、財産の管理や介護サービスの契約を行う「成年後見制度」の利用を推進する法律が先月、施行された。超高齢社会を迎えた日本で認知症高齢者らの権利を守るため、公明党が強くリードして実現した議員立法だ。

厚生労働省の推計によると、2012年時点の認知症高齢者は462万人で、25年には最大730万人に達するという。65歳以上の5人に1人が認知症になる計算で、成年後見制度の活用は喫緊の課題といえるだろう。しかし、実際に制度を利用している人は約19万人にとどまる。

利用が広がらない理由の一つに、制度の利用希望者数に対して後見人のなり手が少ないことが指摘される。身寄りのない高齢者の増加や業務の煩雑さもあり、後見人の65%は司法書士や弁護士などが担っているが、こうした専門職の人数には限りがある。

そこで利用促進法では、親族や専門職に次ぐ第3の後見人である「市民後見人」の育成・活用を明記し、必要な財政上の手当てを速やかに行うよう政府に義務付けた。一般市民に対する研修や情報提供を着実に進め、後見人の確保につなげる必要がある。

その一方で、後見人よる横領といった不正への対策も必要だ。昨年は521件の不正があり、被害額は29億7000万円に上った。特に専門職による不正が37件もあった点は看過できない。関係団体として何らかの対策を講じる必要があるのではないだろうか。

利用促進法では、裁判所や行政機関による監督体制を強化し、首相をトップにした会議で不正防止策を検討、今後3年以内に法整備すると定めている。できる限り早く対策を取りまとめるべきだ。

今後、政府は制度の普及に向けた目標や施策を盛り込んだ基本計画を策定する作業に入る。後見人の確保のほか、制度を利用する際の手続き簡素化や、月に2万〜3万円ほど掛かる利用料の補助なども検討するべきだろう。

公明党は「人権の党」として、利用促進法のフォローアップなどを通じて成年後見制度の改善と普及へ不断の努力を続ける方針だ。
2016年6月3日 公明新聞より掲載