核兵器廃絶に本腰入れる契機に

オバマ米大統領は27日、米国の現職の大統領として初めて広島を訪れ、「核兵器のない世界」をめざす決意をあらためて表明した。

米国内では依然、「原爆の投下で戦争を早く終わらせることができた」という考え方が根強くある。被爆地への訪問に反発する人たちも少なくないだろう。

それでも、同大統領は、被爆地に自分の足で立ち、原爆投下の瞬間を想像し、被爆者の苦しみを肌で感じ取るため、広島に足を運んだ。そうすることで「原爆を生んだ科学の革命は、私たちの道徳の革命も求めている」ことを実感できると訴えた。

広島と長崎を人類の「道徳的な目覚め」としなければならない。同大統領のこの思いを形にするには、核兵器廃絶を進める取り組みに本腰を入れるべきである。

核兵器のない世界への道のりは遠い。核兵器に関する情報に詳しい米科学者連盟(FAS)によると、今年5月26日の時点で、世界中に約1万5350発の核兵器が存在し、そのうちの9割を米国とロシアが保有している。

米ロは戦略核兵器を削減する新核軍縮条約を2010年4月に調印した。同条約は11年2月に発行したが、ウクライナ危機などで両国の関係悪化後、ロシアは戦略核兵器を、同条約が定める配備上限数1550発を超える約1750発に増やしている。米ロは関係改善を進め、核軍縮を再始動してもらいたい。

米国は同条約の配備上限数を下回る1481発まで削減した。しかし、「削減」は核弾頭をミサイルなどから取り外しただけの状態にすぎない。核兵器のない世界の実現を本気でめざすのであれば、核兵器の「解体」と「廃棄」を進めなければならない。

例えば米国とノルウェーは、核兵器保有国の核兵器の解体と廃棄の進ちょく状況を第三国が検証できる仕組みを作るための研究を進めている。核拡散防止条約(NPT)の運用を見直す再検討会議でその研究成果は報告され、NPT加盟国に注目されている。日本も、米国や中国などと核兵器の解体と廃棄を進めるための協力体制の構築に向け、リーダーシップを発揮すべきではないか。
2016年5月30日 公明新聞より掲載